ほつれゆく(仮題)
" ほつれゆく(仮題) "
イヤリング
糸がほつれる
傷を負う
変わりゆく姿を愛せる者に見える景色
古いもの、経年変化がわかりやすい素材が好きです。
酸化した金属、風化したコンクリート、
傷つきながらも深みを増した革、
古い家屋の木材。
糸もそう。
色褪せもするし途中で切れてしまったりもする。
イギリスに旅行に行ったとき、
ある教会で刺繍のタペストリーを見ました。
刺繍部分に少しだけ埃がついていて、
ところどころ糸が弛んだ部分もありました。
それでも、なんて美しいのだろう、と感じました。
このタペストリーは今までどれだけの時間を
この教会で過ごしてきたのだろう。
ここにどれだけの人が訪れてきたのだろう。
物が作られてからの時間には
人の歴史が流れている。
その尊い時間のことを想像させてくれるような古いものに惹かれます。
刺繍で時間経過を表現してみたい。
身に着ける人がこれまで生きてきた時間を。
そこで糸のほつれを刺繍でやってみようと思いついたのでした。
正直に言うと、このほつれは未完成です。
もちろんひとつの作品として完成した状態ですが
「ほつれ」というテーマでもっと追究の余地がある、と感じています。
たとえば刺す間隔や糸の弛み。
こちらは全てきれいに揃えた状態ですが
色々変えてみるともっと面白くできそう。
面積を広く取れば糸の自由度が増しそう。
以前ボロボロの旗を耳飾りとして作ったこともありますが
やはりピッチが揃った状態でした。
人の時間を刺繍するならもっと複雑でなければ。
また、使っていくうちに変化していってくれるのでは?という期待もあります。
そういう意味も含め「未完成」だなと。
言ってしまえば全ての作品には発展の余地があります。
眠る石シリーズもありがたいことにご好評いただき
今や青色の研究の定番になりつつあるのですが、
作り続けながら新たにvol.2やぶら下がりタイプ、
石を複数組み合わせるタイプなど開発しています。
これもご購入くださるお客さま、
目を留めて「かわいい!」と言ってくださる方
いつも見守ってくださる方
皆さまのおかげです。
いつもありがとうございます。
技術の向上、私自身の気づきや変化で
出来上がってくるものをより進化させていきたいと思います。
まずはこのイヤリングを新たなテーマの第一号として。
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